連載 建築家・青木淳の都営交通考察〜地下鉄駅の劇場性について
写真: 第3回 交錯する都市の線   都営浅草線「東銀座」駅

私たちが普段何気なく利用している「駅」。
建築家の視点で見ると、どのように見えるのでしょうか。
青木淳さんに考察していただきました。

第3回交錯する都市の線 都営浅草線「東銀座」駅

  • 文・スケッチ/青木 淳

今回のテーマは、都営浅草線東銀座駅。まずは昭和通りと晴海通りの交差点に立ってみてほしい。この「三原橋」交差点、少々、複雑にできている。2つの道路が立体交差しているだけでなく、2つの地下鉄路線が立体交差しているのだ。

三原橋の交差点のイラスト

一番下は東京メトロ日比谷線で、これは晴海通りの真下を走っている。その上、昭和通りの下を走るのが浅草線だ。両線の東銀座駅は、2つの道路が立体交差するこの交差点の真下にある。だから駅も、当然のことながら、立体交差。その同じ場所で、道路も立体交差する。昭和通りが、晴海通りの下をアンダーパスとなってくぐっているのだ。だから、交差点に立って、手すり越しに下を覗けば、昭和通りが下を走り抜けているのが見える。

浅草線、日比谷線の立体交差のイラスト

浅草線東銀座駅は、この昭和通りのアンダーパスとほぼ同一平面にある。つまり、三原橋交差点下に見えるアンダーパスの両側に、浅草線東銀座駅上りホームと下りホームが、分かれてある。このことを、交差点に立って、まずは上からとくと想像してほしい。様々な線が行き交い、ときにすれ違い、ときに並走する、大都市ならではのこの事態。さて、浅草線東銀座駅は、そんな都市性をどう感じさせてくれるのだろう。期待で胸がわくわくしてきませんか。

浅草線東銀座駅の上りホームと下りホームは、改札内ではつながっていない。行き来には、線路をくぐる地下通路による。この通路は、だから、アンダーパスになった昭和通りの、さらなるアンダーパスだ。通路の上、コンクリートのすぐ上を車が行き交っている。先ほど、交差点の上から下を覗いた私たちは、それを感じることができる。通路を歩いていると、なんだか、すごい体験をしている気分がする。

東銀座駅ホームのイラスト

しかし知らない人がそれを感じられるかというと、答えはノーで、同じことは、改札を抜けたホームにも言えること。ホームの先には、線路に並行して、昭和通りアンダーパスを走り抜ける車が行き交っている。その向こうには、ホーム対岸で、人々が電車を待っている。手前から言えば、地下鉄車両に乗って移動する人々、その向こうに車で移動する人々、その向こうにやはり地下鉄車両に乗って移動する人々、さらにその向こうには、電車を待つ人たちが重なっている。人々の様々なスピードでの、このすれ違いの重なり。それをいま真横から見ていることを想像すると、すごい。が、見えるのは壁ばかり。ま、スペクタクルのために、駅をつくっているのではないので、しかたないけれど。

とはいえ、駅をもっと魅力的にしようとするなら、なにもお化粧のところだけでなく、もっと大きなところでできることがある。実はそこではすでにすごいことが起きているからだ。それを目に見えるように、心に伝わるようにするだけで、駅の魅力ひいては街の魅力が大きく増す、と妄想するのは建築家の悪い癖かもしれない。

  • 青木 淳(あおき じゅん)

    建築家。青木淳建築計画事務所を主宰。青森県立美術館などの公共建築、住宅、一連のルイ・ヴィトンの店舗などの商業施設など、作品は多岐に渡る。1999年日本建築学会賞、2004年度芸術選奨文部科学大臣新人賞などを受賞。主な著書は、『JUN AOKI COMPLETE WORKS Ⅰ:1991-2004』、『同第2巻:青森県立美術館』、『同第3巻:2005-2014』、『原っぱと遊園地』など。

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